本問は,99I19~21の連問の一部です。
22歳の男性。大学4年生。周囲からみて理解しがたい行動がみられるため両親に伴われて来院した。
現 病 歴:両親と弟と同居している。1年程前から次第に寡黙になり,家族ともほとんど口をきかず,自室に閉じこもることが多くなった。大学へもほとんど行かなくなった。最近,まるで誰かと会話している調子でひとりごとを言うが,小声で,なんと言っているのか聞き取れない。時々ニヤニヤと笑ったりもするが,なぜ笑うのかと聞いても,別になんでもないと言う。窓を開けて外を見回し,誰も来ないのに「今,外にいたのは誰?」と家族に聞いたりする。数日前,突然家からいなくなり,2日後に戻ってきたが,どこにいたかは語らない。昨日,テレビのアンテナ線を工具で切断してしまった。
既 往 歴:喫煙と飲酒との習慣はない。特記すべき薬物の使用歴はない。
家 族 歴:特記すべきことはない。
現 症:表情は硬く,こちらの問いかけに関しては肯否について短い答えが返ってくるのみである。困っていることはないかと聞いても「別に」とぶっきらぼうに言う。
医師の質問と患者の答えとは以下のとおりである。
医師 「だれかから命令が言葉で聞こえてきたりしたのですか?」
患者 「うん」
医師 「どこから聞こえたの? テレビから?」
患者 「うん」
医師 「それで聞こえてきた言葉のとおりにしたのですか?」
患者 「うん」
医師 「そういう命令をされるのは困りますか?」
患者 「困る」
医師 「テレビで自分の悪口を放送されていて,不愉快でしたか?」
患者 「うん」
神経学的検査には素直に応じるが,検査中もその場にふさわしくない笑いがみられる。神経学的所見に特記すべきことはない。血液と血清生化学所見とに異常を認めない。
患者は入院して治療を受け,6か月後に退院した。奇異な言動は消失したが自発性の低下が著明で,倦怠感を訴える。大学は中退した。
この患者のリハビリテーションとして適切でないのはどれか。