本問は,97C1~3の連問の一部です。
59歳の男性。歩行時のふらつきのため来院した。
現 病 歴:1年前から階段昇降時に両下肢に力が入らず,半年前から歩く時にバランスをとりにくいこと,ろれつが回りにくいことに気付いた。
現 症:全身状態は良好である。意識は清明で,認知症はない。腰肢帯筋の筋力低下があるが,他の部位の筋力は正常である。筋萎縮,筋把握痛および筋トーヌス異常はなく,歩行の持続により腰肢帯筋の筋力評価は改善を示す。坐位からの起立は腰肢帯筋の筋力低下のため介助を要する。水平性の注視眼振があり,滑動性追従眼球運動は衝動性である。発語は緩慢であり小脳性の構音障害を認める。指鼻試験,踵膝試験では測定障害があり,手指変換運動のリズムが不整である。独歩は不可能であり,両腕を支えると開脚する小脳性の失調性歩行を認める。
検査所見:右尺骨神経の電気刺激を50Hzで施行したときの右小指外転筋の複合筋活動電位(A),胸部エックス線写真(B)および頭部単純MRIのT1強調矢状断像(C)を示す。
入院後経過:入院3週後に肺病変の摘出術を施行,術後1か月目から腰肢帯筋の筋力低下と失調性歩行が改善した。尺骨神経の電気刺激(50Hz)を術後に行ったところ,正常な結果が得られた。
腰肢帯筋の筋力低下の責任病巣はどれか。