本問は,96C13~15の連問の一部です。
56歳の男性。言動の異常を心配した妻に伴われて来院した。担当医の要請で精神保健指定医が診察した。
現 病 歴:1週前に全身倦怠感を訴え内科を受診したところ,肝機能異常の悪化を指摘され,自宅療養と断酒とを指示された。毎日欠かさなかった焼酎4~6合/日の晩酌を止め,安静に専念していたが,数日前から頭痛,発汗および不眠を訴え始め,ついで精神的に焦燥感が強く不機嫌になってきた。昨日,「部屋の中に虫がたくさんいて,おそってくる。」と大声をあげておびえ,虫を身体から払う動作を繰り返したり,家の外に逃げだそうとした。家族がいくら否定しても聞き入れない。夜になってますます不穏となり,昨夜は全く眠っていない。
既 往 歴:肝障害のため2年前に投薬を受けたことがある。
生 活 歴:妻と息子2人の4人家族。20歳時からの大酒家であるが,仕事には真面目な家具職人として現在に至る。
現 症:身長165cm,体重65kg。体温36.5℃。脈拍110/分,整。血圧140/80mmHg。全身の発汗が著明。神経学的診察では細かな手指振戦を認める他は異常を認めない。いろいろ質問しても注意が散漫で何度も聞き直す。時には質問の内容にそぐわない答えが返ってくる。時間や場所に関する見当識や記銘力は明らかに障害されている。診察中にも,「虫がいる。」と言って何度も診察室から逃げだそうとする。入院を勧めても,「こんな恐ろしいところにいたくない。」と頑として入院を拒否する。
検査所見:血液所見:赤血球400万,Hb 11.0g/dL,Ht 38%,白血球9,600,血小板17万。血清生化学所見:空腹時血糖110mg/dL,総タンパク6.0g/dL,アンモニア30μg/dL(基準18~48),総ビリルビン1.0mg/dL,AST 150U/L,ALT 60U/L,LDH 430U/L(基準176~353),ALP 260U/L(基準260以下),γ–GTP 240U/L(基準8~50)。
この患者の治療法として適切なのはどれか。2つ選べ。