本問は,95H13~15の連問の一部です。
60歳の女性。言動の異常を心配した長男夫婦に連れられて来院した。
現 病 歴:2か月前から徐々に家にとじこもり横になっていることが多く,おかしなことを言うようになった。家族によれば,心配することは何もないのに,「今年の所得税が払えない。自宅が抵当に入ったので立ち退かねばならない。」と悩み,「そうなったのも昨年のお盆で先祖供養が不十分だったから。」と自分を責め,いくら言っても聞き入れない。食事もとろうとせず,入浴は無理やりでないと入らない。体重がこの2か月で3kg減少した。夜間はほとんど眠らないまま,何かぶつぶつ言ってはお経を唱えている。「きっかけとしては,昨年新築した自宅の建築費についての税務署からの問い合わせが関係しているかもしれない。」と長男は言う。この問い合わせは通常のもので問題は何もなかった。
既 往 歴:高血圧症のため10年前から投薬を受けている。
生 活 歴:夫と長男夫婦,孫2人の6人家族。元来きれい好きで働き者であった。
家 族 歴:特記すべきことはない。
現 症:身長150cm,体重55kg。脈拍74/分,整。血圧166/92mmHg。神経学的身体診察では異常を認めない。医師がいろいろ質問しても患者はうつむいてほとんど答えないか,小声で二言三言答える程度である。しかし意識ははっきりしており,現在の状況もわかっている。このままではいけないからと入院を勧めても,「貧乏で入院費が払えないから。」と頑として入院を拒否する。改訂長谷川式簡易知的機能評価スケールで23点(基準21以上)。
この患者にみられるのはどれか。