問題番号 : 119D28

63歳の女性。呼吸困難と意識障害を主訴に夫に連れられて夜間救急外来を受診した。2年前から右下肢が上がりにくく転倒するようになり,1年前には右上肢の筋力低下が出現した。線維束性収縮を伴う右優位の四肢の筋力低下と筋萎縮を認め,各種検査の結果,筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉と診断され,病名の告知を受けた。この時点では肺活量,血液ガス分析の結果は正常であったが,将来の呼吸器の導入について本人,夫と主治医が話し合いを重ね,必要時には気管切開の後,人工呼吸器を装着する方針となった。6か月前から食事に時間がかかり嚥下障害も目立つようになった。1か月前の肺活量では%VCが58%であった。本日の朝から呼吸困難の訴えがあり,呼びかけへの反応が徐々に鈍くなったため夫に連れられて受診した。意識は傾眠状態。身長160cm,体重38kg。体温36.9℃。脈拍80/分,整。血圧172/76mmHg。呼吸数20/分。四肢の筋萎縮に加えて舌萎縮を認める。動脈血ガス分析(room air):pH 7.37,PaCO2 67Torr,PaO2 58Torr,HCO3 38mEq/L。主治医と以前に決定していた治療方針に関する意思決定に変わりがないことを救急外来担当医が夫に確認した。
 適切な対応はどれか。

正解
e
国試正答率
85%

Assessment
筋萎縮性側索硬化症〈ALS〉患者が呼吸不全に陥っている。

無料会員登録していただくと、実際の解説をすべて見ることができます。急性の呼吸困難を主訴とする疾患としては,喉頭浮腫,気道異物,自然気胸,気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患の急性増悪などの呼吸器疾患,心不全(急性,慢性の急性増悪),肺血栓塞栓症などの循環器疾患が代表的である。この症例では呼吸器感染症と心不全が疑われるが,胸部エックス線写真は肺炎像というよりも両心不全を示唆する所見を示している。診断:心不全(両心不全)(Nohria分類wet and warm) 選択肢考察 ×a 強い呼吸困難,胸痛などにより安静が保てない場合には,血管拡張による前負荷軽減と,交感神経抑制による心筋酸素消費量の減少を目的としてモルヒネを使用する。この症例ではモルヒネが必要となるほどの興奮状態ではない。

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