62歳の男性。心窩部痛と食思不振を主訴に来院した。半年前から心窩部痛を感じることがあったが,仕事が忙しいため様子をみていた。心窩部痛が持続し,2週間前から食思不振が出現したため受診した。既往歴に特記すべきことはない。喫煙歴はない。飲酒は焼酎1合/日を40年間。父が胃癌で70歳時に手術。身長170cm,体重52kg(半年間で8kg減少)。体温36.8℃。脈拍80/分,整。血圧128/72mmHg。眼瞼結膜に軽度の貧血を認める。眼球結膜に黄染を認めない。左鎖骨上窩に径2cmのリンパ節を触知する。上腹部に径5cmの腫瘤があり,圧痛を認める。腸雑音に異常を認めない。直腸指診で直腸膀胱窩に硬結を触知する。尿所見:蛋白(-),糖(-),ケトン体1+。血液所見:赤血球368万,Hb 8.9g/dL,Ht 32%,白血球9,300,血小板21万。血液生化学所見:総蛋白6.5g/dL,アルブミン3.1g/dL,総ビリルビン1.9mg/dL,直接ビリルビン1.2mg/dL,AST 128U/L,ALT 116U/L,LD 277U/L(基準120~245),ALP 283U/L(基準38~113),γ-GT 132U/L(基準8~50),尿素窒素12mg/dL,クレアチニン1.6mg/dL,血糖98mg/dL,CEA 38ng/mL(基準5以下),CA19-9 98U/mL(基準37以下)。CRP 3.0mg/dL。上部消化管内視鏡検査で進行胃癌を認めた。頸部・胸腹部・骨盤部造影CTで,多発肝転移,リンパ節転移,腹膜播種が確認された。患者に検査結果を伝え,薬物による抗癌治療が標準治療であることを説明したところ,「薬ではなく手術で癌を取り除いてもらいたいと思う。家族と相談してきたいのですが」と申し出た。
対応として適切でないのはどれか。