問題番号 : 113F78
本問は,113F77~79の連問の一部です。 58歳の女性。血痰を主訴に来院した。現病歴:数年前から咳嗽,喀痰および労作時呼吸困難を自覚していたが,喫煙習慣が原因と自己判断し受診はしていなかった。数日前から喀痰に鮮血が混じるようになったため受診した。既往歴:20歳時に交通事故による右膝蓋骨骨折の手術を受けた。生活歴:喫煙は20歳から55歳まで40本/日。飲酒は機会飲酒。家族歴:特記すべきことはない。現 症:身長153cm,体重52kg。体温36.2℃。脈拍80/分,整。血圧132/74mmHg。呼吸数16/分。SpO2 97%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。右背部にcoarse cracklesを聴取する。腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない。表在リンパ節を触知しない。検査所見:血液所見:赤血球350万,Hb 9.8g/dL,Ht 30%,白血球10,300,血小板30万。血液生化学所見:AST 19U/L,ALT 15U/L,LD 158U/L(基準176~353),γ-GTP 16U/L(基準8~50),総ビリルビン0.4mg/dL,総蛋白7.2g/dL,アルブミン3.8g/dL,尿酸2.9mg/dL,尿素窒素11mg/dL,クレアチニン0.5mg/dL,Na 140mEq/L,K 4.0mEq/L,Cl 105mEq/L,Ca 8.9mg/dL,Fe 20μg/dL,TIBC 231μg/dL(基準290~390),フェリチン643ng/mL(基準20~120),CEA 4.5ng/mL(基準5以下)。CRP 1.4mg/dL。画像所見:上肺野(肺野条件),中肺野(縦隔条件),下肺野(肺野条件)及び上腹部の造影CT(A)~(D)を別に示す。呼吸機能所見:現在と20歳時の膝蓋骨骨折手術前のフローボリューム曲線(E)(F)を別に示す。 説明を聞いた患者は家族と相談してからの意思決定を希望し,1週間後の再受診を予定した。その再受診の前日に咳嗽の増加に伴い1回30~50mL程度の喀血を連続して3回認めた。翌日の受診時,咳嗽を頻繁に認めるが喀血は認めず,喀痰には赤褐色の血液が付着している。脈拍104/分,整。血圧140/88mmHg。呼吸数12/分。SpO2 96%(room air)。血液所見:赤血球339万,Hb 9.5g/dL,Ht 29%,白血球8,900,血小板29万。 実施した生検の結果では,いずれも肺腺癌の所見であった。 患者に説明する内容として誤っているのはどれか。
画像診断:上画像参照。Assessment:
無料会員登録していただくと、実際の解説をすべて見ることができます。急性の呼吸困難を主訴とする疾患としては,喉頭浮腫,気道異物,自然気胸,気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患の急性増悪などの呼吸器疾患,心不全(急性,慢性の急性増悪),肺血栓塞栓症などの循環器疾患が代表的である。この症例では呼吸器感染症と心不全が疑われるが,胸部エックス線写真は肺炎像というよりも両心不全を示唆する所見を示している。診断:心不全(両心不全)(Nohria分類wet and warm) 選択肢考察 ×a 強い呼吸困難,胸痛などにより安静が保てない場合には,血管拡張による前負荷軽減と,交感神経抑制による心筋酸素消費量の減少を目的としてモルヒネを使用する。この症例ではモルヒネが必要となるほどの興奮状態ではない。