本問は,113F74~76の連問の一部です。
70歳の男性。労作時の息切れを主訴に来院した。
現病歴:4年前に縦隔腫瘍に対し摘出手術が施行され,病理検査で軟部肉腫と診断された。2年前に肺転移に対して2か月間アドリアマイシンが投与され,その後病変の増大はない。1か月前から倦怠感があり,数日前から労作時の息切れを自覚するようになった。ここ3か月で3kgの体重増加がある。
既往歴:45歳から高血圧症で内服加療。
生活歴:喫煙は20歳から33歳まで20本/日。飲酒は機会飲酒。
家族歴:母親は肺癌で死亡。
現 症:意識は清明。身長172cm,体重63kg。体温36.5℃。脈拍80/分,整。血圧164/78mmHg。呼吸数18/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸静脈の怒張を認めない。胸骨正中切開の手術瘢痕を認める。Ⅲ音を聴取し,心雑音を認めない。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない。四肢末梢に冷感を認めない。両側下腿に浮腫を認める。
検査所見:血液所見:赤血球399万,Hb 11.6g/dL,Ht 38%,白血球4,000,血小板16万。血液生化学所見:総蛋白6.2g/dL,アルブミン3.6g/dL,AST 62U/L,ALT 81U/L,LD 251U/L(基準176~353),尿素窒素14mg/dL,クレアチニン0.6mg/dL,血糖97mg/dL,Na 142mEq/L,K 4.4mEq/L,Cl 108mEq/L,脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉696pg/mL(基準18.4以下),心筋トロポニンT 0.14(基準0.01以下),CK-MB 5U/L(基準20以下)。CRP 0.3mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.4,PaCO2 38Torr,PaO2 83Torr,HCO3- 24mEq/L。胸部エックス線写真で心胸郭比は3か月前に53%,受診時58%。心電図で高電位とV5,V6の軽度ST低下を認める。1年前の心エコー検査は正常である。今回の来院時の心エコー検査で左室はびまん性に壁運動が低下しており,左室駆出率は35%。
症状の原因として最も考えられるのはどれか。