本問は,112C54~56の連問の一部です。
84歳の女性。ふらつきがあり,頻回に転倒するため夫と来院した。
現病歴:2か月前に腰椎圧迫骨折を起こし,自宅近くの病院に入院した。入院後は腰痛のためベッド上で安静にしていた。徐々に痛みは改善し,1か月後,自宅に退院したが,退院後にふらつきを自覚し,転倒するようになった。ふらつきは特に朝方に強い。難聴と耳鳴りは自覚していない。入院した病院で頭部を含めた精査を受けたが原因が明らかでなく,症状が改善しないため受診した。
既往歴:68歳時から糖尿病と高血圧症,75歳時から逆流性食道炎と不眠症。
生活歴:夫と2人暮らし。喫煙歴と飲酒歴はない。入院までは夫と飲食業をしていた。リハビリテーションは週1回続けている。
家族歴:父親は胃癌で死亡。母親は肺炎で死亡。弟は糖尿病で治療中。
現 症:意識は清明。身長150cm,体重36kg(2か月前は40kg)。体温36.0℃。脈拍72/分,整。血圧146/78mmHg(立位3分後138/74mmHg)。呼吸数16/分。眼瞼結膜に貧血を認めない。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。脳神経に異常を認めない。眼振を認めない。四肢に明らかな麻痺を認めない。筋強剛を認めない。握力14kg(基準18以上)。指鼻試験陰性。Romberg徴候陰性。明らかな歩行障害を認めない。通常歩行速度0.7m/秒(基準0.8以上)。手指振戦を認めない。振動覚と腱反射は正常である。
検査所見:尿所見:蛋白(-),糖1+,ケトン体(-)。血液所見:赤血球403万,Hb 12.1g/dL,Ht 38%,白血球7,400。血液生化学所見:総蛋白6.8g/dL,アルブミン3.3g/dL,AST 22U/L,ALT 14U/L,LD 278U/L(基準176~353),CK 90U/L(基準30~140),尿素窒素21mg/dL,クレアチニン0.7mg/dL,血糖128mg/dL,HbA1c 7.4%(基準4.6~6.2),総コレステロール186mg/dL,トリグリセリド100mg/dL,HDLコレステロール50mg/dL,Na 135mEq/L,K 4.2mEq/L,Cl 97mEq/L。心電図に異常を認めない。高齢者総合機能評価〈CGA〉:基本的日常生活動作(Barthel指数)100点(100点満点),手段的日常生活動作(IADLスケール)8点(8点満点),Mini-Mental State Examination〈MMSE〉27点(30点満点),Geriatric Depression Scale 2点(基準5点以下)。
患者の状態として最も考えられるのはどれか。