問題番号 : 112B42

本問は,112B42~43の連問の一部です。

 76歳の女性。息切れを主訴に来院した。
現病歴:1年前から息切れを自覚するようになり,3か月前から10分程度歩くと息切れがするようになった。3日前に風邪をひいてから息切れが増悪して動けなくなったため,同居の娘に伴われて総合病院の呼吸器内科外来を受診した。
既往歴:糖尿病,高血圧症,慢性心不全(NYHAⅡ),変形性膝関節症,骨粗鬆症および不眠で複数の医療機関に通院していた。半年前からこれらの医療機関の受診が滞りがちになっていた。
生活歴:娘と2人暮らし。日中,娘は仕事に出ている。摂食,排泄および更衣は自分でできるが,家事や外出は困難で,入浴は娘が介助している。喫煙は15本/日を45年間。飲酒歴はない。
現 症:意識は清明。身長158cm,体重42kg。体温36.6℃。脈拍104/分,整。血圧120/76 mmHg。呼吸数28/分。SpO2 93%(room air)。皮膚は正常。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸部に甲状腺腫大やリンパ節を触知せず,頸静脈の怒張を認めない。呼吸補助筋が目立つ。心音に異常を認めない。呼吸音は両側の胸部にwheezesを聴取するが,cracklesは聴取しない。腹部は平坦,軟。四肢に浮腫を認めない。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは27点(30点満点)。
検査所見:胸部エックス線写真で肺の過膨張を認めるが,浸潤影や肺うっ血を認めない。心胸郭比は53%。胸部CTで全肺野に低吸収域〈low attenuation area〉を認める。

 副腎皮質ステロイドの内服とβアゴニスト吸入の外来治療を4日間行い,呼吸器の急性症状は改善しSpO2は96%(room air)となった。しかし,看護師から「これからも禁煙するつもりはないけど,病院には通わないといけないのかね」と患者が話していると聞いた。
 この時点での患者への対応として最も適切なのはどれか。

正解
b
国試正答率
94%

Assessment
①緩徐に息切れ増悪(糖尿病,高血圧,慢性心不全) ⇒ 心

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