問題番号 : 111G67

本問は,111G66~68の連問の一部です。

 84歳の男性。早期胃癌の治療のため入院中である。
現病歴:2か月前から上腹部痛を自覚し,改善がないため受診した。上部消化管内視鏡検査で胃前庭部小彎の早期胃癌と診断された。5日前に入院し,翌日に内視鏡的粘膜下層剥離術が行われたが,同日夜に200mL程度の吐血があり,緊急で内視鏡的止血術が行われた。吐血した際には激しい咳を伴っていた。昨日から38.7℃の発熱と呼吸困難とを自覚している。
既往歴:60歳時に胆囊摘出術。
生活歴:喫煙は60歳まで10本/日を40年間。飲酒歴はない。石綿などの粉塵吸入歴はない。
家族歴:父親が肺癌で死亡。母親が脳梗塞で死亡。
現 症:意識は清明。身長154cm,体重41kg。体温37.6℃。脈拍96/分,整。血圧112/60mmHg。呼吸数16/分。SpO2 92%(リザーバー付マスク 6L/分 酸素投与下)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音に異常を認めないが,両側の胸部にcoarse cracklesを聴取する。腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(-),糖(-),ケトン体(±),潜血(-)。血液所見:赤血球378万,Hb 11.4g/dL,Ht 33%,白血球16,800(桿状核好中球8%,分葉核好中球76%,好酸球3%,単球3%,リンパ球10%),血小板33万。血液生化学所見:総蛋白6.1g/dL,アルブミン2.3g/dL,総ビリルビン0.6mg/dL,AST 32U/L,ALT 59U/L,LD 363U/L(基準176~353),尿素窒素15mg/dL,クレアチニン0.6mg/dL,血糖169mg/dL,HbA1c 6.0%(基準4.6~6.2),Na 135mEq/L,K 3.9mEq/L,Cl 99mEq/L,脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉120pg/mL(基準18.4以下)。免疫血清学所見:プロカルシトニン0.20ng/mL(基準0.05未満),CRP 18mg/dL。尿中レジオネラ抗原陰性,尿中肺炎球菌抗原陰性。動脈血ガス分析(リザーバー付マスク 6L/分 酸素投与下):pH 7.45,PaCO2 35Torr,PaO2 63Torr,HCO3 25mEq/L。仰臥位のポータブル胸部エックス線写真(A)及び胸部CTの水平断像(B)と冠状断像(C)とを別に示す。
 この患者に投与すべき薬剤はどれか。

正解
e
国試正答率
88%

画像診断
上画像参照。

Assessment

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