本問は,110B56~58の連問の一部です。
32歳の男性。発熱と咳嗽とを主訴に来院した。
現病歴:2日前から38℃台の発熱と咳嗽が出現した。市販の解熱鎮痛薬を服用したが,37.0℃以下に解熱せず,今朝からは呼吸困難も感じるようになったため受診した。腹痛と下痢はない。
既往歴:27歳時に右胸部の帯状疱疹。29歳時に右側肺炎。30歳時に左側肺炎。
生活歴:食品加工の工場で働いている。妻と4歳の子供がいる。喫煙は20本/日を10年間。飲酒は機会飲酒。
現 症:意識は清明。身長165 cm,体重58 kg。体温38.3℃。脈拍88/分,整。血圧86/42 mmHg。呼吸数28/分。SpO2 95%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音に異常を認めない。右側の胸部でcoarse cracklesを聴取する。腹部は平坦で,腸蠕動音に異常を認めず,肝・脾を触知しない。
検査所見:血液所見:赤血球398万,Hb 11.3 g/dL,Ht 37%,白血球3,400(桿状核好中球22%,分葉核好中球58%,好酸球3%,好塩基球2%,単球8%,リンパ球7%),血小板15万。血液生化学所見:総蛋白7.5 g/dL,アルブミン3.8 g/dL,尿素窒素18 mg/dL,クレアチニン0.8 mg/dL,尿酸5.8 mg/dL,Na 137 mEq/L,K 3.9 mEq/L,Cl 100 mEq/L。CRP 8.8 mg/dL。胸部エックス線写真を別に示す。
その後の経過:胸部エックス線写真と喀痰のGram染色標本の検鏡結果から肺炎球菌による細菌性肺炎と診断し入院となった。入院初日からセフトリアキソンの投与を開始したところ,入院3日目までに咳嗽は減少し食欲も出てきた。入院3日目の体温は36.8℃,脈拍80/分,整。血圧116/58 mmHg。呼吸数16/分。SpO2 96%(room air)。血液所見:白血球6,300(桿状核好中球14%,分葉核好中球61%,好酸球3%,好塩基球2%,単球7%,リンパ球13%),血小板22万。CRP 4.4 mg/dL。胸部エックス線写真で所見の改善を認めた。初診時に採取した喀痰および血液の培養からは肺炎球菌が検出された。その後も症状は改善傾向が続き,入院4日目に採取した喀痰の細菌培養検査では肺炎球菌が陰性化していたが,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌〈MRSA〉が検出された。
この患者に対する適切な治療はどれか。
