本問は,106H35~36の連問の一部です。
78歳の男性。悪心と嘔吐とを主訴に来院した。
現病歴:1年前に肺癌と診断され,右上葉切除術と抗癌化学療法とを受けた。その後,定期的に通院をしていたが,1か月前に背部から右の側胸部にかけて疼痛が出現した。外来受診の際,骨シンチグラフィで胸椎と右肋骨とに骨転移巣が判明した。疼痛に対して消炎鎮痛薬を処方された。その後も疼痛が増悪し,呼吸困難が出現したため,昨日の外来受診時にオピオイドの処方が追加された。昨夕からオピオイドの内服を開始したが,吐き気が出現し食物を嘔吐したため,家族に伴われて来院した。頭痛や腹痛はないという。
既往歴:65歳時から高血圧症と脂質異常症とで治療中。
生活歴:喫煙は20本/日を57年間。1年前の手術時から禁煙している。
家族歴:兄が肺癌のため75歳で死亡。
現 症:意識は清明。身長168 cm,体重57 kg。体温36.8℃。脈拍72/分,整。血圧128/72 mmHg。呼吸数20/分。SpO2 93%(room air)。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に黄染を認めない。咽頭に異常を認めない。頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない。圧痛を認めない。腸雑音は低下している。背部と右肋骨部とに圧痛を認める。
検査所見:尿所見:蛋白(−),糖(−),潜血(−)。血液所見:赤血球402万,Hb 11.9 g/dL,Ht 36%,白血球9,300,血小板39万。血液生化学所見:アルブミン3.2 g/dL,クレアチニン0.8 mg/dL,AST 28 IU/L,ALT 26 IU/L,LD 421 IU/L(基準176~353),ALP 403 IU/L(基準115~359),アミラーゼ150 IU/L(基準37~160),CK 42 IU/L(基準30~140),Na 131 mEq/L,K 4.4 mEq/L,Cl 97 mEq/L,Ca 9.7 mg/dL,P 2.5 mg/dL。CRP 3.4 mg/dL。胸部エックス線写真で浸潤影を認めない。腹部立位エックス線写真ではガス像がやや多いが,鏡面形成を認めない。
悪心と嘔吐の原因として最も考えられるのはどれか。