問題番号 : 105E68

本問は,105E66~68の連問の一部です。

 73歳の男性。腹痛を主訴に来院した。
現病歴:1週間便が出ていない。2日前に腹痛を自覚したが我慢していた。昨日から尿が出ていない。今朝,家族に伴われて受診した。
既往歴:60歳から高血圧症で内服治療中。昨年の人間ドックで便潜血反応陽性のため,精査が必要といわれたが,受診しなかった。
現 症:意識レベルはJCSⅠ-1。身長160 cm,体重60 kg。体温38.5℃。呼吸数24/分。脈拍112/分,整。血圧72/42 mmHg。表情は苦悶様で,腹部全体に痛みを訴えている。心音に異常を認めない。腹部は膨隆し,板状硬であり,反跳痛を認める。腸雑音を聴取しない。皮膚は温かい。
検査所見:血液所見:赤血球350万,Hb 9.0 g/dL,Ht 27%,白血球15,000(好中球83%,好酸球1%,好塩基球1%,単球2%,リンパ球13%),血小板5.2万。血液生化学所見:血糖90 mg/dL,HbA1c 5.0%(基準4.3~5.8),総蛋白6.0 g/dL,アルブミン4.0 g/dL,尿素窒素30 mg/dL,クレアチニン1.0 mg/dL,尿酸5.0 mg/dL,Na 145 mEq/L,K 4.0 mEq/L,Cl 100 mEq/L。免疫学所見:CRP 10.0 mg/dL,CEA 20 ng/mL(基準5以下)。
 急性腹症と診断して,開腹手術が予定された。
 手術翌日,呼吸困難を訴えた。体温36.5℃。呼吸数24/分。脈拍100/分,整。血圧118/80 mmHg。FIO2 0.5で経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉90%。両側肺野で吸気時のcoarse cracklesと呼気時のwheezesとを聴取する。心エコー検査で明らかな異常を認めない。胸部エックス線写真を別に示す。
 病態として最も考えられるのはどれか。

正解
e
国試正答率
89%

画像診断
上画像参照。

Assessment

無料会員登録していただくと、実際の解説をすべて見ることができます。急性の呼吸困難を主訴とする疾患としては,喉頭浮腫,気道異物,自然気胸,気管支喘息,慢性閉塞性肺疾患の急性増悪などの呼吸器疾患,心不全(急性,慢性の急性増悪),肺血栓塞栓症などの循環器疾患が代表的である。この症例では呼吸器感染症と心不全が疑われるが,胸部エックス線写真は肺炎像というよりも両心不全を示唆する所見を示している。診断:心不全(両心不全)(Nohria分類wet and warm) 選択肢考察 ×a 強い呼吸困難,胸痛などにより安静が保てない場合には,血管拡張による前負荷軽減と,交感神経抑制による心筋酸素消費量の減少を目的としてモルヒネを使用する。この症例ではモルヒネが必要となるほどの興奮状態ではない。

無料会員登録して、解説をすべて見る